手動写植機 PAVO-10と現像処理

写研PAVO-10 検査証袋

PAVO-10はPAVO-8の廉価版で、複雑な組版を必要としない用途向けに色々な機能を削ぎ落としてコストダウンをして発売されました。1988年で330万円だったそうです。

写研PAVO-10 検査証

このPAVO-10の実機がはっきり確認できる写真は無かったのですが、完成検査報告書が出てきました。色々な項目をちゃんと検査してますとの事ですが、具体的な数字はありません。いったいどんな検査をしたのでしょうか。このような専門機だったらたぶん内部規格はあるのでしょうけど、JISとかの規格もないのですからどうやって証明するのでしょうね。

印字テスト結果

この機械で打った印字テストをした印画紙も入っていました。皆さんはこの印画紙がどうやって文字が出てくるかご存知でしょうか。
まず、紙の上に感光剤を塗ります。この感光剤は光が当たると化学変化を起こします。それを現像液に浸けると化学変化した箇所が黒くなります。浸ける時間が長いほど黒くなります。もちろん光の強さによっても黒さは変わってきます。その後、タイミングよく引き上げて水洗いをして定着液に浸けます。これで黒くなる事が止まります。それから、流水で定着液を流して乾燥させれば出来上がります。

この現像液や定着液は自分で作って処理する必要がありました。今は排水に対する環境基準も厳しくなりましたのでそのまま下水に流すことは出来なくなりましたが、以前は現像液は少し薄めてそのまま流していました。しかし定着液は中に銀が入っていたため、専門業者に依頼をすれば時期によっては処理代がだいぶ安くなりました。

1986頃 暗室と自動現像機 乾燥は無し

この現像液や定着液は温度管理も必要です。ある程度の温度の中でなければその性能が落ちたり逆に強く反応しすぎたりして使えなくなってしまいます。今は自動現像機があって現像時間や温度などは自動で調整してくれるので楽になりましたが、昔は冬だとお湯につけて温めたり、夏だと氷水で冷やしたりする必要がありました。

1986年頃 急ぐときはドライヤーで乾燥

黒さというのは色々あります。はっきりとした真っ黒から灰色に近い黒とかがありますが、これは印画紙の感光レベルや現像処理によって変わってきます。印刷用の版下なのでその黒さが一定でなければ印刷した時にムラのある印刷物になってしまいます。しかし自動ではなく手で作業をする時はどうやってその黒さを安定させたのでしょうか。それは先ほどの印画紙の左上にある四角数字1~7とかの数字で管理しました。この数字は濃淡がついていました。
現像作業は暗室でします。暗室の中は赤くて暗い灯りだけです。その赤い灯りの中でこの四角数字の何番目が出てきたら定着液に浸けると決めておけば時間や濃度の管理に少々バラツキがあっても安定した現像が出来ました。

最後に購入した乾燥まで付いた自動現像機

父が初めて写植の仕事をしていた時は長屋に居ました。間口一間半のウナギの寝床みたいに奥行きのある家でした。狭い小さな家のなかに暗室を作るには狭すぎましたので、写植の機械が置いてある部屋の隣の押し入れを改造して現像室を作りました。現像液や定着液を引き出しのように積み重ね、うずくまって現像、定着、水洗いの作業をしてました。
押し入れのすぐ横には写植機がギリギリにおかれ、文字盤を動かすと暗室に食い込むようになっていたので、現像中に文字盤で頭をぶつける事もあったみたいです。赤く暗い押し入れの中で手作業で現像するのはだいぶ大変みたいでした。

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写植自動現像機

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